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第1回
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講師:
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 執行役員 主席研究員
女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室室長
矢島 洋子氏 -
講師:
株式会社三交イン 代表取締役社長
村田 陽子氏
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基調講演 「企業における女性役員育成の必要性」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
執行役員 主席研究員 矢島洋子氏
ライフとキャリア
矢島氏のライフとキャリアについて、以下のポイントでお話いただきました。
- 一般職から総合職へ、正社員から嘱託社員への転換と再雇用等のキャリアチェンジ
- 裁量労働制・選択年俸制、在宅勤務等、柔軟な働き方が認められたことでの出産・子育てとの両立
- 長期休業制度による政府機関出向へのチャレンジ
- 初めての女性執行役員への不安と覚悟
ここまでキャリアを重ねてこられたのは、柔軟な働き方が認められ上司や職場が適切にマネジメントを行ってくれたこと、就業年数や就業時間でなく成果で評価されたことに加え、自主的に組織・経営に関する提案を行ってきたことへの評価もキャリアアップのカギになったのではないかと、振り返られました。
今なぜ女性活躍推進か
女性活躍推進については、2009年育児・介護休業法改正で短時間勤務制度が義務化されたことに後押しされたと語りました。しかし、結婚・出産で辞めない女性が増加したものの、産後『時間制約社員』になり、企業が女性を「採らない」、管理職が「育てない」、女性は「管理職にならなくてよい」という、これまでのサイクルが続いてしまっていることを指摘。
今求められているのは、『時間制約社員』が活躍できる組織への変革であると話されました。
変革への課題として挙げられたのは大きく3点。
- 育児・介護休業法改正以降「出産時定着」する女性が増えたことで「管理職候補層女性」のボリュームも増え、数年経てば管理職の女性が増えると考えられていたが、増えなかったこと。
- これは女性たちの意識の問題ではなく、企業内での「配置」「研修」「異動・転勤」において、男女に大きな差があり、女性は経験が積めていないことが問題であること。
- 管理職が忙しすぎ、女性だけでなく男性も管理職になりたくない現象にもなっていること。
以上のことから、企業は適切な育成機会を与え、適切に評価する対応を考えていかなければならないと語られました。
女性役員登用の意義
最後に、女性役員登用の意義として以下のポイントを示されました。
女性社員にとって
- 職業キャリアの可能性が広がる
- 公正な業務配分・評価・処遇を得られる機会が増加する
- 多様な課題に即した環境整備が進む
企業にとって
- 「政策決定過程への女性の参画」による多様な視点の取り込み
- 配置・業務配分におけるアンコンシャスバイアスや働き方による偏りの除去
- ライフイベントに即した柔軟な働き方を前提とした公正な処遇・評価の浸透
- すべての社員が積極的な能力発揮・キャリア形成を目指す組織になる
- 様々なステークホルダーからの評価が上がる
講演後には質疑応答が行われ、参加者の皆さんは講演の内容をさらに深められました。
対談 「愛知県における女性役員登用の未来」
株式会社三交イン 代表取締役社長 村田 陽子氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 執行役員 主席研究員 矢島 洋子氏
変化してきた女性活躍への思い
村田氏はご自身のキャリアを歩む中で、女性活躍への思いが3段階に変化してきたとお話しくださいました。
- 女性活躍無関心
総合職として入社するも一般職の仕事を兼務する女性の働き方に疑問を抱かなかった時期。働きやすい職場で勤続年数を重ね課長へ昇格。 - 女性活躍拒絶
部長に昇格するも、「女性だから昇格できたと思われている」と卑屈な思い込みにとらわれた時期。昇格の機会を一度自ら拒否したことから、周囲を失望させたと暗い気持ちになっていた際、たまたま経営トップの会長と社内で会ったときに小さくガッツポーズをしてくれたことで、私を認めて応援してくれているのだと気付き、与えられた機会に前向きに取り組もうという心境にガラッと変わる。 - 女性活躍の応援・推進へ
社長就任の打診を受け悩んだが、「村田さんのやり方でいいんじゃないの」と言葉を掛けてもらい男性と同じでないといけないという思い込みが、ぱっと晴れた。女性活躍を推進する気持ちに。
ハードな時期を乗り越えるには
村田氏は自身の課長時代に、15年間過ごした情報システム部から異動になり、慣れない総務人事の仕事を任された頃をハードな時期と振り返りました。その時期を越えられたのは自分ひとりの力ではなく、周囲を頼れるメンバーで固めてくれていた会社側の配慮があったこと、社内にはロールモデルがいなかったが社外の女性たちと交流を持てたことが力になったと語りました。
経営へ踏み出すには
経営企画をする企画室時代の業務から、経営管理の実務的な経理の視点や知識を学んだという村田氏。しかし、経営者として必ずしも知識は必要無いと言います。
矢島氏からも、社内には各分野の専門家がいるので、目線を上げていく意識を持つことが大事だとの意見が出されました。
昇進のオファーに尻込みしてしまう女性も多くいると想像されるなか、自分を枠にはめて仕事の選択肢を狭めるのはもったいないと、村田氏はご自身の体験談をお話されました。
時短勤務について
ネガティブな側面が強調されがちな時短勤務者について、村田氏、矢島氏両者からポジティブな側面が語られました。
- 時短勤務者がいるホテルではもともと厚くシフトが組んである。コロナ禍での急な欠勤にも対処でき、他店舗に応援に行けるなど、うまく機能している。
- 時短だからこそ辞めないで続いている。その人が辞めていたら、新人を採用して一から育てなくてはならない。
女性社員へのアプローチ
男女隔てなく色々な経験を積んでもらいたいという思いを持つ村田氏。昇進、昇格に躊躇してしまう方々へ強引にでも背中を押さなくてはいけない時があると語る一方で、背中を押した後にきちんと様子を見て、何で行き詰まっているのか、どのような成果を上げているのかを把握し、ほめることやフォローすることが大事だとお話されました。
女性活躍の未来
愛知県で女性経営者、役員の増加が期待されることに対し、村田氏、矢島氏それぞれからのメッセージが贈られました。
多様な人が意思決定の場に登場することは大きな力になります。女性たちは仕事と家庭の二つだけではなく、自分の生きがい、趣味など、もっと欲張っていけたらいいなと思っています。そんなプライベートも、きっと仕事のパフォーマンスにも跳ね返ってくると思います。-村田氏
個々の企業だけではできないけれど、業界、地域で取り組めば変わってくることがあると思います。今日集まってくださった皆さんがそれぞれの職場でリーダーシップを発揮していただけると、地域として業界として変わっていき、新しいことが生まれてくるのではないでしょうか。-矢島氏
対談後は質疑応答が盛んに行われ、参加者の皆さんの熱気が伝わる時間となりました。
第1回
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