Event Report

「女性活躍の世界潮流と日本への示唆
~女性のエンパワーメントを通じて未来を創る~」

株式会社カレイディスト 代表取締役社長
G20 EMPOWER日本共同代表
塚原 月子氏

自分なりの一貫性を持たせたキャリア

国家公務員からキャリアをスタートされ、米国大学院への留学、外資系コンサルティング会社、会社設立、プロボノ活動と様々な経験を積まれた塚原氏。ご自身のキャリアを振り返り、「何をしたいのか分からないように見えるかもしれないが、ミッションドリブンで活動してきたので、自分にとっては一貫性がある」と語られました。

世界の潮流、G20 EMPOWERの活動から

女性活躍は、世界でも重要視される課題です。今年のG20議長国であるインドネシア政府が主催する「G20女性のエンパワーメント担当閣僚会合」では以下の3つのトピックが議論になったと紹介されました。

  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの回復として、ジェンダーギャップを解消することが国際的に重要な意味を持つこと
  • テクノロジードリブンな経済活動が増える中で、テクノロジー・デジタル分野におけるジェンダーギャップが看過できないものになっていること
  • 大企業だけではなく中小企業、起業家を含め裾野を広げた意思決定層の女性活躍が重要であること

塚原氏が日本共同代表を務めるG20 EMPOWERの提言をもとに、塚原氏は日本の課題を以下のように示されました。

  • より徹底した測定管理
  • 大企業だけでなく中堅・中小企業における女性活躍推進の裾野拡大
  • サプライヤーダイバーシティの推進
  • よりグローバルに、視座をあげ、未来を見据えたリーダーシップ構築
  • パブリックナラティブや教育におけるジェンダーバイアスの打破

女性がリーダーシップを学ぶ意味

組織に求められるリーダー像を「チームとして成果を上げ、組織に貢献できるリーダー」としたうえで、「女性らしい」ではなく「自分らしい」リーダーシップを発揮できる存在になる必要があると塚原氏は参加者へ伝えられました。

女性が「自分らしい」リーダーシップを発揮することへの阻害要因になりうるものとして、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」や「男性に比べホットジョブ(枢要な業務)を経験できていないこと」を紹介。
女性が置かれている社会経済・ビジネス環境の今・これからを踏まえ、様々なジェンダーバイアスの存在とその影響を理解したうえで、キャリア形成、リーダーシップ発揮にチャレンジしていってほしいとお話されました。

さらに、リーダーシップを発揮するために心がけることとして、以下の4点を示されました。

  1. 自分や周囲のアンコンシャスバイアスを克服する
  2. ホットジョブをつかみ取る
  3. キャリアを豊かにする人間関係を構築する
  4. インクルーシブリーダーシップを身につける

女性活躍の未来に向けて

参加者のグループワークを経て、第1部の最後に塚原氏から参加者へのメッセージが贈られました。

新しい観点を持ち込むことは、アイデアだけではなく、問題視されていなかったことに目を向ける点にも重要性があります。
女性活躍は女性にとってプレッシャーにもなりえますが、ひとりひとりの貢献がみんなのためになることと思って進めていけたらいいのではないかと思います。グループワークでもみなさんの潜在能力を大いに感じました。
みなさん自身が「良い」と思える人生・キャリアを築いていって、その集合体として次世代も含めた良い未来が作られるといいなと思っています。

「DXでイノベーションを生み出す
~3Dスマート&トライプロジェクトの経験から~」

株式会社ワコール 執行役員 イノベーション戦略室長
篠塚 厚子氏

異文化に触れてきたキャリア

現在、株式会社ワコールホールディングスと株式会社ワコールの執行役員を兼務する篠塚氏。「未来の当たり前を創る」ことを目標にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進されています。執行役員に登用されるまでのキャリアを振り返り、ワコールの生え抜きでありながらも国際部門や出向の経験から異文化に触れてきたこと、事業のあるべき姿と現場のギャップを理解していることがご自身の強みであるとお話されました。

ワコールのWOMAN EMPOWERMENT

従業員の約9割が女性で、女性比率の高いワコール。しかし、管理職や経営幹部の比率は高くないと課題をお話され、現在掲げている女性活躍推進の目標を紹介されました。

  • 目標1:
    管理職(課長級以上)に占める女性割合30%以上に向けて取り組む。
  • 目標2:
    全社員(100%)がリモートワークを取り入れた柔軟な働き方ができる状態になるように取り組む。

お客様ニーズを満たすためのデジタル戦略

ワコールがデジタル施策を進めた経緯として、市場環境の変化によりお客様の価値観が変わってきたため、従来のチャネルを軸としたビジネスモデルを転換していく必要があったと篠塚氏。さらに、ご自身が育児休業中にママ友とお話されたことから、下着を購入する際の採寸に抵抗感があるお客様も多いことに気づき、よりストレスフリーな顧客体験を提供できる店舗づくりのイメージを描いていかれました。

実際に「測る」「見せる」「提案する」を自分が非接触で完結できる「3D smart & try」というサービスが開発され、立ち上げから3年で計測者数が13万人を突破しています。さらに、このサービスはボディデータというものが中心にあるため、様々な事業分野での活用の可能性がでてきました。お客様の課題解決から、ビジネスの進化・拡大へと繋がっていく見通しをお話されました。

リーダーとして

篠塚氏はDXのプロジェクトリーダー経験から得られたことを3点紹介されました。

  • 夢を先に走らせる
    リーダーをやることが目的ではなく、自分自身が実現したいことが先にあったから能動的に動いていくことができ、結果としてリーダーとなった。
  • 「できる」も「できない」も発信する
    子育てとの両立の中で、できないことまで明確に発信したからこそ、手助けしてくれる人が現れた
  • 人は期待を超えてくる
    自分に出来ない部分をメンバーに任せ良いものができた経験から、人と一緒に仕事をすると、自分の期待を超えた仕事ができると実感できた。

さらに、リーダーとして普段から心がけていることもご紹介くださいました。

  • 健康第一。家族第一。(自分も相手も)
    シンプルだけれど、ここから外れることはしない。
  • 「だからいい」を探す。
    弱みに思えるところも「◯◯だからいい」に変える。
  • 「ありがとう」「どう思う?」は人の3倍。
    自分から沢山声をかけることで、意見も言いやすくなり、コミュニケーションの多いチームになる。

これからの時代に向けて

デジタルにかかわる中で、時代の変化を肌で感じると語る篠塚氏。ご自身がこれからの時代のリーダーシップに必要と考えること3つ紹介されました。

  • 世の中は中央集権から自律分散型へ→分散と自走化
    散り散りになるものを強い力で束ねるのはなく、個の方向性の違いを尊重しながらそれぞれをもっと走らせるようなリーダーシップ。子育てのようなリーダーシップが求められていくのでは。
  • 経済的価値と社会的価値の両軸→価値観のアップデート
    利潤追求だけを考えるのではなく、社会的使命を果たし、社会に必要とされる存在として経済的価値を生み出すことが必要な時代だと感じている。
  • 正解のない時代→主観を磨く
    自分なりの考えや判断軸を持つこと。「主観」が必ず次の時代のキーワードになると、感じている。

みなさんへのメッセージ

質疑応答、グループワークを経て、第2部の最後に篠塚氏から参加者へのメッセージが贈られました。

仕事とプライベートは切っても切り離せない関係にあると思います。プライベートにも切り込んでいかないと、幸せな働き方は実現できないのではないでしょうか。グループワークでリアルなお話がされていて、大変共感しました。
私も自分らしく楽しく執行役員ライフを過ごし、意外と楽しそう!と誰かの励みになるようにしていきたいです。

第2回
イベントレポート詳細

PDF ダウンロード